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としょかんのへや

2010年10月01日

No.54 曝書(ばくしょ)

  和装本の時代、本を所蔵している所は、台帳に照らし合わせて本の所在を確認した上、紙を食べる害虫の紙魚(しみ)を追い出すためにそれらの本を日光に曝すという作業を時折行っていました。これを曝書(ばくしょ)と呼びます。虫干しそのものがあまり行われなくなった今日の図書館においての「曝書」は、休館して行う蔵書点検や大規模な図書整理のことを指す言葉になっています。 

   池田市立図書館におきましても、本館は9月6日から17日まで、石橋プラザは9月6日から10日までの間、年に一度の「曝書」を行ったところです。期間中はご不便をおかけいたしまして申し訳ございませんでした。みなさまのご理解、ご協力に深く感謝いたします。
   では、期間中図書館員がどんな作業を行っていたかと申しますと、まずは図書館が所蔵するすべての本や雑誌など(本館と石橋プラザとを合わせて約32万冊)のバーコードを一冊一冊スキャンしていきました。次に行ったのがメインコンピュータの所蔵状況と実際にスキャンしたデータとの照合で、これがいわゆる「蔵書点検」です。さらにその後、所在不明になっている本の探索、書架のレイアウトの変更、本の整理整頓、館内の修繕などを行っているうち、瞬く間に期間は終了いたしました。
   作業をしながら古い本や懐かしい本にたくさん出会いました。時間ができたらもう一度読みたいと思う本が何冊もありました。本はいつの時代も変わらない内容でそのままそこに存在し続けますが、読み手の感性は時を経るとともに豊かになります。今の感性のもとでその本を読み返した時、昔読んだ時以上のさらなる感動を得ることができるという本の魅力を再認識いたしました。


   ここ数年、名作や古典文学の読書の伸びが顕著です。ロシア文学『カラマーゾフの兄弟』が累計100万部を突破し、池澤夏樹さん個人編集の世界文学全集がヒットし、そして『ライ麦畑でつかまえて』という1950年代の作品が人気作家村上春樹さんによる新訳(タイトル『キャッチャー・イン・ザ・ライ』)でベストセラーになっています。海外文学だけでなく、太宰治、松本清張の生誕100周年記念に伴いその作品が映画化されたり、ドラマや舞台の題材にされたりと、活字の範疇を超え再びヒットしています。『源氏物語』『枕草子』『伊勢物語』などの知的遺産もまた、世代を超えて支持されています。
   名作や古典文学には普遍的で安定した魅力があります。そこに描かれている人間の本質や心情の動きは、50年後も100年後も、おそらくは1000年後も変わらずに存在し続けるものであると思います。不安定で移ろいやすいこの現代社会の中に生きているからこそ、人は変わらないものに対して憧れ、かつ、価値を見出そうとするのではないでしょうか。

 

   「温故知新」という孔子の言葉があります。出典は『論語』で、孔子が師となるに当たり先人の思想や学問をよく調べ研究しそこから新しい知識や見解を得たことに由来する言葉ですが、人は誰しも知らず知らずのうちに「温故知新」の精神を心に持ち合わせているのかも知れません。
   図書館は、新しいものを取り入れつつ古いものも大事に守るというバランスを保ちながら図書を安定供給することにより、利用される方がいつも心をリフレッシュできる場所であり続けることをめざして今後も日々努力してまいります。


   さて、一つお知らせがございます。読書週間にちなみまして、今年も図書館まつりを開催いたします。    
   布絵本作りなどの体験コーナーやおはなし会、講演会などにご参加いただくとともに、本を手に読書の秋を満喫されませんか。みなさまのお越しをお待ちしております。

<traveller>

 

○『カラマーゾフの兄弟』(ドストエフスキー/著,米川正夫/訳 は

『ロシア・ソビエト文学全集⑧⑨』 (平凡社1964), 『世界文学全集⑲⑳』(河出書房新社1962)に収録)


○光文社古典新訳文庫(2006刊) 『カラマーゾフの兄弟①~⑤』 亀山郁夫/訳
『ライ麦畑でつかまえて』 J.D.サリンジャー/著 野崎孝/訳   白水社 1984
『キャッチャー・イン・ザ・ライ』 J.D.サリンジャー/著 村上春樹/訳
                       白水社 2003

『人間失格』 太宰治/著   集英社 1990