• 利用案内
  • 蔵書検索/予約
  • 図書館カレンダー
  • 図書館FAQ
  • 利用者のページ

としょかんのへや

2011年03月01日

No.59 「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。」

   大掃除でせわしない年末を過ごし、ゆっくりするはずだったお正月も瞬く間に過ぎ去り、2月は駆足で通り過ぎて、ふと気付けばもう3月。本当にあっという間です。歳を取るごとに時間が経つのがなぜかますます速くなる気がしますが、そのように感じるのは果たして私だけなのだろうかとよく思います。

   生物の時間に関する著書として、本川達雄氏の「ゾウの時間ネズミの時間」という本が有名ですが、とても面白いのでおすすめします。ゾウ、ネズミ等の哺乳類はいずれも心臓が約20億回鼓動を打てば一生を終える。ネズミは鼓動が速くエネルギー消費量が大きいが寿命は短い。一方ゾウは鼓動がゆっくりでエネルギー消費量が少ないが寿命は長い。ネズミの生活テンポが速く短命であるのに対し、ゾウに流れる時間はゆったりとしていて長生きしているように思えるが、生命活動の総量としては実は同じであるから、物理的な寿命の長短にかかわらず、一生を生き切った感覚はゾウもネズミも変わらない、という考え方にとても興味を惹かれます。
   同氏は別の著書「「長生き」が地球を滅ぼす」の中で「子供の時間・大人の時間」についてもふれており、「歳を取るごとに時間が経つのがますます速くなる気がするのはなぜか」を考えるヒントにもなります。先程の「ゾウの時間ネズミの時間」では生物のサイズあたりのエネルギー消費量がポイントでしたが、同様にして人間の体重あたりのエネルギー消費量について言えば、子供は多く、その後歳を取るごとに少なくなってくるそうです。子供はエネルギーをたくさん使って時間が速く進むから、1日24時間という同じ絶対時間の間に、大人よりも多くのことをやってたくさんの経験が持てるので1日を長かったと感じる。時間はそのただ中に入っている時と後から振り返って思い出す時とでは速さの感覚が逆転するから、速い時間は後から振り返ると長い時間と認識され、ゆえに子供の頃の時間は大人の時間に比べて長い、ということになるのだそうです。
時間に対する考え方には諸説があり定説はありませんが、ただ1つ言えることは、ごく当たり前のことですが、人間を含む生物が生きられる時間には必ず限りがあるということです。20億回限りしか鼓動を打てないというのなら、いろんなものに出会ってわくわくしたりいろんなものを見て感動したりのドキドキに1回でも多く打ちたいと思うのですが、みなさまはいかがお感じになられるでしょうか。
   3月は新しい節目への準備となる時期です。4月には新年度を迎え、周囲の環境が変わる方もたくさんおられると思います。人や場所やモノにもお別れをしていかなくてはならないと思うと何だかとても悲しくて孤独感にさいなまれることもあります。そんな時に心に浮かぶのが、冒頭に記した「方丈記」です。今という時間は二度と戻らない、この世に常に同じであり続けるものなど無く、すべてのものは移り変わっていくという「無常」の概念は昔からありました。詰る所、世の中が無常であるからこそ、それを前向きにとらえて行動していくことが大切なのかもしれません。この出会い、この環境は、今まさにこの時にしか存在しないからこそ、今周りにいる人との時間を大事にしよう、今自分にできることを精一杯しよう、そしてそれらを全うしたその先には、きっと新たな出会いもあるに違いない、いつの時代も人はそうして明日への望みをつないできたのではないでしょうか。
   3月はまた、弥生とも呼ばれますが、「草木がいよいよ生い茂る月」という意味の「木草弥や生ひ月(きくさいやおひづき)」が「やよひ」となったのがその由来とか。私たちもいよいよ始まる新しい季節に向け、新しい気持ちのもと、心も体も健康かつ自然体でいたいものですね。
 
<SEDITIONARIES>
 
追伸 図書館カードをお持ちの方は、池田市内転居の際には住所変更の手続きを、転出の際にはカードの返却をお願いいたします。
 
 
『方丈記』 鴨長明/著,ポプラ社 1976
『ゾウの時間ネズミの時間』 本川達雄/著,中央公論社 1992
『絵ときゾウの時間とネズミの時間』 本川達雄/文,あべ弘士/絵,福音館書店 1994
『「長生き」が地球を滅ぼす』 本川達雄/著,阪急コミュニケーションズ 2006