としょかんのへや
2011年06月01日
No.62 時の記念日
先月26日、気象庁は近畿地方の梅雨入りを発表しましたが、これは平年より12日も早いそうですね。雨は天の恵みと知りつつも、うっとうしい季節が何もこんなに早くやってこなくてもいいのにとついつい思ってしまいます。
窓から雨の様子を眺めていると気分まで暗くなり、休日にも外出するのがなんとなく気乗りしない、6月はそういう月ではないでしょうか。
そんな6月にも何か面白い日はないだろうかとカレンダーを眺めても、ご承知のとおり祝日は1日もありません。そこで、記念日まで表記されている別のカレンダーを見ますと、6月4日の「虫歯予防デー」、そして6月10日の「時の記念日」がありました。
「時の記念日」は、天智天皇が(中大兄皇子時代に)作った「漏刻」(大きな容器から水が少しずつ漏れるようにしてその減っていく度合を計る水時計)を、671年6月10日(現行暦)に新天文台に据えて、鐘と太鼓で時刻を知らせたことに由来しています。毎年6月10日には大津市の近江神宮で天智天皇を祀る「漏刻祭」が行われ、最新の時計が奉納されています。天智天皇は毎年新しい時計をみてさぞ驚いておられることでしょう。取扱説明書も是非つけてあげてほしいです。
さて、「夕焼け小焼けで日が暮れて山のお寺の鐘がなる」という歌にもあるように、時計というものが身近になかった江戸時代の人々にとっては、鐘の音が時刻を知る唯一の手段でした。その時刻も1日を24時間に等分する現在の「定時法」と違い、昔の時刻は「不定時法」といって、日の出のおよそ30分前を明け六つ、日没のおよそ30分後を暮れ六つとして、その間を昼夜それぞれ六等分して一刻(いっとき)としていたため、昼と夜で、また、季節によってその一刻の長さが違ったそうです。現代の時間の感覚から思えばなんだか少しややこしい感じがしますが、当時の人々は特段何の不便も感じることなく、四季折々の恵みを満喫しながら生活していたものと思われます。
一分一秒正確な時を刻む時計を持ち歩いている現代人は、常に細かい時間を基準にして生活することが出来ます。一日中時計を見ずに過ごすことは難しいでしょう。しかし、便利な反面、日々の生活は何かと時間に追われるようになりました。忙しい生活の中にあるからこそ、たまには時間を忘れてのんびり過ごしたり、時間を気にせず何かに熱中したりすることは、この上ない贅沢といえるのではないでしょうか。時間を大切にするということは、1日24時間の中からいかに自分の時間を捻出できるか、そしてその時間をいかに有意義に過ごせるかいうことに尽きると思います。
雨が降り続く日々に気がめいり、せっかく時間があっても「ああ、今日はいったい何をして過ごそうか」と思うことがあるかもしれません。そんな時、時間を忘れさせてくれる本と出会いに、また、満足できる時間の過ごし方のヒントを見つけに図書館へ足を運んでみてはいかがでしょうか?
一度でも何かを見つけることが出来た人は……次からはきっと雨の様子を眺めながら「やった、今日も一日楽しめるぞ」とニヤリと笑うことになるはずです。
<でんでんむし>