としょかんのへや
2012年08月01日
No.76
みなさんが、大人になってよかったと思うことはなんでしょうか?夜中まで起きていても怒られないとか、面倒くさくてお風呂に入らないで寝ても怒られないとか、好きなものばっかり食べても怒られないとか。なんだか怒られネタばっかりですが…私なら、宿題をやらなくてもいいこと。これがいちばん。
特にこの時期は、大人になったことを本当にうれしく思います。みなさんの中にも、宿題に追われ冷や汗をかいた昔を思い出す方も多いのではないでしょうか?私の場合、宿題で一番てこずったのが、読書感想文でした。当時、本を読んで感想を書かせるなんてナンセンス!と開き直る度胸がなかった私は、「全く書けない自分は頭が悪いんだ」と、素直にへこんでいました。
たしか、中学の時に選んだ読書感想文は、いちばん頁数の少なかったカフカの『変身』。グレゴール・ザムザという主人公の名前が、ザザ虫(よく水辺でもぞもぞしている虫)みたいで気持ち悪いな、とか、なんで楽しい夏休みにテンションの下がる本を読まなきゃいけないの!?・・・くらいの感想しか思い浮かびませんでした。結局何を書いたのかまったく覚えていませんが、多分あとがきを丸写しだったと思います。ごめんなさい。
おかげで、文芸作品嫌いな学生時代だったのですが、宿題という重荷から開放された今は
いろいろな楽しみ方ができるようになりました。まず、同じ本でも、訳者が違えばタイトルも作品の趣も微妙に違います。たとえば・・・
トーマス・マン/著 『ベニスに死す』 佐藤 晃一/訳 集英社 1969
『ヴェネツィアに死す』 岸美光/訳 光文社 2007
ボリス・ヴィアン/著 『うたかたの日々』 野崎歓/訳 光文社 2011
『日々の泡』 曾根元吉/訳 新潮社 1998
タイトルだけなのに受ける印象って、けっこう違うと思いませんか?二冊同時に読んでみると、訳者の解釈の違いが見えて面白いんですよ。また、多くの文芸作品は映画化されています。原作を読んでから映画を観たり、むかし観た映画の原作を読んだりするのも楽しいですね。映画を観ながら、この役者は私の思い描いた人物像とぜんぜん違う!と憤ったりするのも一興です。
最近ですと、ゲーテの『ファウスト』やブロンテの『ジェーン・エア』が日本公開されました。2011年にイギリスで制作された『嵐が丘』の公開も待たれるところです。
図書館ではDVDの貸し出しも行っております(広域利用の方を除く)ので、本とあわせて、ぜひぜひご利用ください。
-わたしのおすすめ作品-
(本) 『赤と黒』上・下 スタンダール著 光文社
(DVD)『赤と黒』 クロード・オータン=ララ監督
永遠の美青年ジェラール・フィリップが主人公ジュリアンを演じています。
(本)『ヴェネツィアに死す』トーマス・マン著
(DVD)『ベニスに死す』 ルキノ・ヴィスコンティ監督
マーラーの五番四楽章(アダージェット)が印象的な傑作。
(本)『はてしない物語』ミヒャエル・エンデ著 岩波書店
(DVD)『ネバーエンディングストーリー』 ウォルフガング・ペーターゼン監督
エンデの世界をSFXを用いて描いたファンタジー大作。
(本)『若草物語』 オルコット著 福音館書店
(DVD)『若草物語』 ジョージ・キューカー監督
キャサリン・ヘップバーンが主人公ジョーを演じています。
大人になり宿題から解放された方々は、いろいろな角度から文芸作品を楽しまれてはいかがでしょうか。学生さんは、宿題を片付けてからね!
<ねこによろしく>