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としょかんのへや

2016年02月29日

No.119 十三まいりのおはなし

   寒さもようやく衰えはじめ、やわらかな日ざしが、心地よく感じられる季節となりました。春の陽気に誘われて、これからおでかけの機会が増えそうですね。とはいえヘビーな花粉症の私は、毎年複雑な気持ちで冬を見送るのですが…
   さて、三月といえば、卒業式など、さまざまな節目の時期にあたり、あたらしい人生の旅立ちを迎えられる方も多い事と思います。私は昨年末大掃除をしていた時、小学校の卒業式(大昔!)の時に着た服を見つけ、それを着て、十三参りに行ったことを思い出しました。
   中学校に入学する前の春休みの時期、新品の一張羅に袖を通し、阪急電車に揺られ京都の嵐山まで行きましたが、全く知らない同世代の子がたくさんいる状況が初めてだったので、「面白いなぁ」とちょっとだけ自分の世界が広がった感覚を覚えています。
   関東ではあまりなじみのない行事のようで、七五三ほど一般的ではありませんが、数え年で十三歳になった男女のお祝いが十三参りです。「知恵もうで」「知恵もらい」とも言われ、旧暦の三月三日前後に虚空蔵菩薩を安置しているお寺に親子でお参りする行事で、厄災を祓い、知恵と福徳を授けてもらう目的で、江戸時代ではさかんに行われていたようです。
   現在は新暦の四月十三日を十三参りの日として、その前後一か月くらいにお参りに行くことが多いようです。もともと十三参りは女の子の行事で、数えの十三歳は初めて生まれた年の干支を迎える年齢であり、女性最初の厄年とされていました。女の子は、この時初めて本断ちの着物(大人仕立ての着物)を作り、肩上げしてお参りします。特に有名なのは、私が参詣した京都の嵐山にある法輪寺の十三参りなのですが、参詣の帰り道、石段の参道を降り、渡月橋を渡り終えるまでは振り返ってはいけない、と言われています。振り返ると、せっかく頂いた知恵を失ってしまうという言い伝えがあるからです。
  母から言い伝えを聞いて、当時ギリシア神話を愛読していた私は、オルフェウスの二の舞を演じるわけにはいかない!と固く決意し、その後、振り向くことなく無事渡月橋を渡り終え、満足して帰路についたのは良い思い出です。
   桜の季節、出会いと別れの季節ともいいますが、図書館は常に「出会い」が待っている場所といえるでしょう。春にぴったりなイベントや展示コーナーを用意して、みなさまのご来館をお待ちしております。
<ケロリン>
 
『鳩居堂の日本のしきたり豆辞典』 鳩居堂/監修,マガジンハウス 2013
日本人のしきたり  飯倉晴武/著青春出版社 2003
10分で読める神話と星座の話 横山洋子/著学研教育出版 2014
はじめてのギリシア神話 尾高薫/著徳間書店 2014