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としょかんのへや

2018年05月02日

No.145 山頭火(さんとうか)と放哉(ほうさい)

  種田(たねだ)山頭(さんとう)火(か)という俳人をご存知でしょうか。

 
「分け入っても分け入っても青い山」
「木の芽草の芽あるきつづける」
  (山頭火『鉢の子』より)
 
  これらは山頭火の俳句です。今の季節に読むと、新緑の風景が思い浮かぶでしょうか? しかし彼の句集を読み進めていくと苦悩が垣間見え、単なる風景描写ではないことが分かります。
  詩や俳句、短歌は言語感覚を研ぎ澄まし、短い字数や行数の中に作者の美学や信念を凝縮させます。海外でも日本の俳句や短歌は翻訳・紹介されており、欧米では詩人、俳人、歌人の仕事は〝crystallizing words(言葉を結晶化させる)〟と言われることがあります。そして結晶化された言葉は作者の感性や人生と深く関わると理解されています。
  山頭火は家族の喪失、経済難、結婚と出家、放浪の旅など流転の人生を送りながら、定型俳句におさまりきれない自らの思いを自由律俳句の形に結実させました。
  山頭火と並び、自由律俳句で著名な俳人の尾崎放哉もまた出世コースの職業や結婚生活を捨て、流転の人生を送りました。短歌や俳句の題材を求め、名所や旧跡に出かけて創作することを吟行(ぎんこう)と言います。この吟行という形の旅が、山頭火や放哉にとって人生そのものになったのでしょう。
  「旅で果てることもほんに秋空」
  (山頭火 四国遍路の句)
 
  今月、石橋プラザでは山頭火や放哉についての展示を行っています。人生の苦難を乗り越えようとする力は、自らの内にある信念と情熱であることに気づくと思います。彼らについての本を手に取ってみてください。
 

人間尾崎放哉」 上田都史:著 潮文舎 1981

海も暮れきる」 吉村昭:著 講談社 1980

放浪の俳人山頭火」 村上護:著 講談社 1988

山頭火句集」 種田山頭火:著 村上護:編 筑摩書店 1996